Teacher教員紹介

教授 (Eisuke Kawamura) 短期大学部

  • 学位

    博士(工学)

  • 主な授業科目

    畜産環境・堆肥利用論、畜産学概論、家畜飼養、飼料総論、環境保全型農林業論、技術者倫理

  • 所属学会

    :日本養豚学会、農業施設学会、日本畜産技術士会

神奈川県畜産試験場で開発された家畜用の「回分式オキシデーションディッチ法」(神奈川方式)を未来の畜産現場につなぐ

汚水処理技術

県の畜産公設試験場で家畜排せつ物の処理利用技術についての研究に従事していた際、豚舎および牛舎、搾乳施設の廃水を処理対象とした馬蹄形曝気槽(酸化溝方式)を持つ連続式と回分式の2種類の汚水処理施設(オキシデーションディッチ法)を維持管理していました。畜舎廃水は、曝気槽内の活性汚泥と呼ばれる微生物により浄化処理されます。繋ぎ飼い牛舎では、ふん尿を分離する構造にすることで、牛舎廃水の汚水処理が可能になります。全国でも珍しい牛舎廃水用汚水処理施設の設計や維持管理指導をしてきました。またこれら施設の窒素低減を図るために間欠運転を導入し、豚舎汚水中のリンを化成肥料様の固形状のリンとして回収する装置を開発しました。回収したリンは、化成肥料の代替として活用できます。

堆肥化処理技術

家畜が排せつしたふんは、水分・比重調整を行うことで好気性微生物による堆肥化処理が行われます。その際、発酵温度が60℃以上となり、病原菌や雑草の種子が死滅した堆肥が生産されます。公設試験場に設置された発酵槽の深さの異なる発酵乾燥処理施設や複列の発酵槽を持つ発酵乾燥処理施設、堆積処理を行う堆肥舎、密閉縦型発酵装置など様々な堆肥化処理施設の維持管理を行ってきました。堆肥化初期の水分・比重調整の目安をバケツの重量で把握する手法や示温材を用いた簡易温度計で発酵過程の最高到達温度を確認する手法を開発しました。堆肥化時に発生する熱を回収・利用する技術として、密閉縦型発酵装置の排気を熱交換器に通し、温風や温水を回収する技術を開発しました。回収した温風は、密閉縦型発酵装置の入気とすることで、冬期に電熱ヒーターを使用しなくても堆肥化が促進できます。また温水は、床暖房として利用することで、化石燃料や消費電力を削減に寄与します。

脱臭処理技術

密閉縦型発酵装置から発生する高濃度な悪臭は、脱臭が困難です。臭気成分をシャワーリングにより水に溶解させ、家畜用浄化槽にて汚水と臭気の同時処理技術の開発を行いました。また豚舎臭気に含まれる悪臭成分が、ふん中に含まれる成分が揮散してこれらの悪臭を構成していることを明らかにしました。

環境影響評価技術

堆肥化施設や汚水処理施設を建設する場合、単に建設費の安い施設を選択するだけでなく、施設の維持管理費や化石燃料消費が少ない施設を選択することで、持続可能な農業の実践につながります。LCA(ライフサイクルアセスメント)とは、工業製品や農業製品(またはサービス)が作られ、その役目を終えるまでに辿る一連の流れ(ライフサイクル:Life Cycle)を、評価や査定(アセスメント:Assessment)することです。この手法を用いて、建物の建設から運用、解体・廃棄までに排出される二酸化炭素などの環境負荷を、総合的・定量的に評価します。酪農・養豚における家畜ふん尿システムの施設建設と運営に伴う二酸化炭素や温室効果ガスの排出量を評価する研究を行ってきました。

技術相談

これまで、県の行政担当、研究および普及指導員や各種委員を経験していることから、畜産環境に関する様々な立場を経験し、全国の畜産環境事情に精通しています。特に堆肥化処理、汚水処理、脱臭に関する研究のほか、施設の設計や維持管理技術についての知見を持ち、全国で技術指導をおこなっています。

農家や県・市の畜産担当職員向けの研修、普及指導員研修、民間企業の環境研修に加え、堆肥化施設や汚水処理施設の維持管理に関する現地指導や家畜ふん尿処理施設の新設や増設にかかる規模積算の相談にも対応可能です。

Messageメッセージ

家畜から毎日排泄されるふん尿は、どのように処理・利用されているか?ご存じでしょうか?家畜のふんは畑の野菜などの作物の肥料とするため、我々の肉眼では見えない微生物の力により、発酵温度が60℃以上になる「堆肥化」処理を行います。尿を含んだ畜舎汚水は、活性汚泥微生物による「浄化」処理を経て河川に放流されます。家畜の排せつ物の処理の面から微生物の働きや農業を学んでみませんか?